省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業等の「省力化製品」の導入を支援します。
この補助金を活用すれば、IoTをはじめとした省力化機器の導入費用の補助を受けられます。
経済的な援助だけでなく、省力化機器の導入を通じて、売上拡大や生産性向上のメリットも期待できます。
そうなれば、従業員の賃上げにもつながり、人手を確保しやすくなる好循環が生まれるのではないでしょうか。
人手不足や生産性の停滞に悩んでいる事業主の方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次
- 概要
- 補助率と補助上限額
- 対象となる製品
- 小規模企業や個人事業者も利用しやすい!
- 申請のスケジュールと流れ
- 活用するメリット
- 活用事例
- よくある質問
- まとめ
|概要
■ 目的
この補助金は、人手不足や低い生産性などの問題を抱えている中小企業の、IT機器や省力化製品の導入を支援するものです。
売上拡大や生産性向上などを支援することで、最終的に付加価値の向上や賃上げにつながることを目指しています。
■ 対象事業主
要件は、「人手不足の状態」の事業者で、以下のような状態であれば該当します。
- 従業員の平均残業時間が30時間を超えている
- 従業員が前年度比で5%以上減少している
- 求人を掲載しても充実しないなど
該当する事業者は多いのではないでしょうか。
|補助率と補助上限額
従業員数 | 補助率 | 補助上限額 | 一定以上の賃上げをした場合の 補助上限額 |
5名以下 | 1/2 | 200万円 | 300万円に引き上げ |
6~20名 | 500万円 | 750万円に引き上げ | |
21名以上 | 1,000万円 | 1,500万円に引き上げ |
- 省力化製品を導入し、「労働生産性年平均成長率3%向上」を目指す事業計画に取り組むまなければなりません。
- 補助上限額の引き上げるためには、事業終了時に、「給与支給総額+6%以上」「事業場内最低賃金+45円以上」とする計画を立てる必要があります。
|対象となる製品

省力化投資補助金の特徴の一つが「製品カタログ」の存在です。
補助対象となる省力化製品は、事務局ホームページの「製品カタログ」に登録されたものに限られます。
カタログには、製品の説明だけでなく、業務プロセス・省力化効果・活用のポイントなどが記載されています。
また、導入することによって、業務がどのように改善され、どのように省力化が図れるも説明されています。
省力化についてまとめられているので、ぜひ一度ご覧になっていただきたいと思います。


出典:中小企業省力化投資補助事業 製品カテゴリ(2024.09.04現在)
※登録件数が「0」の製品は今後予定されているものです
現在登録されている製品は、149品あります。
対象製品は随時増えています。最新情報は中小企業基盤整備機構のホームページで確認してください。
|小規模企業や個人事業者も利用しやすい!

次に、「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」などの補助金と、「省力化投資補助金」との違いや、利用のしやすさについて説明します。
■ 目的の違い
- ものづくり補助金:革新的なサービス開発や試作品の開発などを支援
- 事業再構築補助金:新分野展開などを支援
- 省力化投資補助金:原則として「既存事業の省力化」のための補助金
■ 申請が簡単
・ものづくり補助金・事業再構築補助金
10~15枚の事業計画書を作成し、導入設備の概要、事業効果などの資料を作成が必要
・省力化投資補助金
カタログから「効果が検証された省力化製品」を選ぶので、必要な書類が少ない(1枚程度)
申請書は、選んだ製品の販売業者と共同で作成する
この補助金では、「製品カタログ」から製品を選び、「販売事業者一覧」から販売業者を選ぶと、販売事業者から「サポート」をしてもらえます。
そのため、負担は大幅に軽減され、安心感もあるのではないでしょうか。
■ 採択後もスピーディ
「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」の場合、採択後に相見積りなどの書類を提出し、やっと交付決定となるため、事業を始めるまでに時間がかかってしまうケースも珍しくありません。
しかし、省力化投資補助金は「採択=交付決定」となるので、事業を迅速に実施できます。これは、大きな利点ではないでしようか。
|申請のスケジュールと流れ
■ スケジュール
●応募・交付申請:随時受付中(2024年8月9日(金)~)
●採択・交付決定:随時
■ 申請の流れ
- ホームページの「製品カタログ」から、製品を検討する。
- 販売事業者と省力化製品の導入を決める。
- 販売事業者に「省力化投資補助金を利用したい」ことを伝えて、共同で事業計画を作成する。
- 申請は、販売事業者と共同で行う。
- 審査を経て、補助金の採択・交付が決定する。
|活用するメリット

この補助金を活用すると、省力化機器の導入を支援してもらえるだけでなく、以下のようなメリットもあります。
■ 生産性が高まり人手不足を解消できる
省力化機器を導入することで業務生産性が高まります。
マンパワーで行っていた作業を機械に任せることで、人間はより高い付加価値を生み出せる業務に時間を割けるためです。
限られた人材で業務をやりくりしている事業主にとって、生産性を高め、人手不足を解消できるメリットは大きいでしょう。
■ 従業員の労働時間を削減できる
省力化機材を導入すれば、人が行う作業が減るため労働時間を削減できます。労働時間の削減により、従業員のワークライフバランスをとりやすくなるでしょう。
働きやすい職場環境を整備できれば、人手を集めやすくなり、人材定着と人材確保が期待できます。
特に、転職が当たり前になりつつある現代は、正社員やパートなどの雇用形態に関係なく、魅力的な職場環境を整備する重要性が高まっています。
■ 販売事業者からサポートを受けられる
補助金の申請をする際に、販売事業者から手続き面のサポートを受けられます。
また、省力化機器を導入する際も、販売事業者から使い方や効果的な活用方法などの支援を受けることも可能です。
せっかく省力化機器を導入しても、効果的に使いこなせなければ意味はありません。「機械に弱いから不安」という事業主でも、販売事業者からサポートを受けられるのは心強いと思います。
単に経済的な援助を行うだけでなく、生産性の向上に結び付けるためのサポートを受けられるというのが、この補助金の大きなメリットではないでしょうか。
|活用事例
実際の活用例を見ていきましょう。
■ 飲食業界:自動調理や自動配膳ロボットの導入

自動調理ロボット・自動配膳ロボットを導入することで、キッチンやホールの人手不足を解消できます。
注文したテーブルまで料理を運び、巡回して食べ終わった食器を回収してくれるため、ホールの業務を任せることが可能です。
自動調理ロボット・自動配膳ロボットは人手不足の問題を解決してくれる可能性があります。
■ 介護業界:介護ロボットを導入

介護ロボットを導入することで、人手不足の解消と、従業員の労働時間を抑制するメリットが期待できます。
要介護者の身体を持ち上げたり、車いすへ移乗したりするとき、介護士は足腰や腰に大きな負担を強いられます。
介護ロボットに一部を任せることで、介護士の負担を軽減でき、労災事故を防ぐことにもつながります。
また、身体的負担が減った分、利用者一人ひとりに対してきめ細かいケアを行えるようになり、質の高い対人サービスを提供できるようになるのではないでしょうか。
■ 建設業界:点検ドローン・運搬ロボットを導入

点検ドローン・運搬ロボットを導入することで、作業員の負担と労災事故が発生するリスクを軽減できます。
点検ドローンがあれば、高所や危険な場所を遠隔から点検でき、人間よりも迅速かつ広範囲の点検を行うことも可能です。
また、運搬ロボットがあれば、輸送・移動を任せられるため、安全な作業環境を整え、労働時間も短縮できるのではないでしょうか。
■ 物流業界:自動搬送や積み下ろしロボットを導入

自動搬送ロボット・積み下ろしロボットを導入することで、商品の移動や整理を速く正確に行えます。
従業員の身体的負担の軽減、労働時間の短縮はもちろん、倉庫の運用効率も上がることが期待できます。
また、ロボットは作業ミスが少なく、誤出荷や損傷のリスクが軽減できます。
さらに、ロボットは24時間年中無休で運用が可能なので、インターネットショッピングの出荷ニーズにも対応できるのではないでしょうか。
|よくある質問

Q. 導入する機材は事業主が自由に選択できますか?
中小企業省力化投資補助金を受けるには、「省力化製品カタログ」から選ぶ必要があります。
また、「省力化製品カタログ」は、随時更新され、対象製品が増えているので、最新情報をご確認ください。
Q. 省力化製品・導入経費の最低利用期間はありますか?
補助金で導入した省力化製品は、1年以上は利用しなければなりません。納品後1年未満で利用解除した場合、補助金を返還しなければなりません。
Q. 省力化製品とは何ですか?
「製品カタログ」に載っている製品で、中小企業等の人手不足解消に効果があると認定された、IoT、ロボットなどです。また、人手不足だけでなく、売上拡大や生産性向上にも効果があると認められています。
Q. 採択・交付決定を受けた後、再度の応募・申請は可能ですか?
補助上限額に達するまでは、複数回の応募・交付申請が可能です。
Q. IT導入補助金との併用は可能ですか?
「IT導入補助金」と「中小企業省力化投資補助金」は、同一又は類似した内容の事業では併用できません。
例えば、同じ業務プロセスの製品を導入する場合は、申請できません。
Q. ものづくり補助金との併用は可能ですか?
以下にあてはまる場合は、併用できません。
・「ものづくり補助金」の交付決定を受けて10カ月を経過していない
・過去3年間に2回以上「ものづくり補助金」の交付決定を受けた
そうでなければ、「ものづくり補助金」と「中小企業省力化投資補助金」は併用可能です。
Q. 事業再構築補助金との併用は可能ですか?
「事業再構築促進補助金」に採択され、補助の対象になった機器は、「中小企業省力化投資補助金」で導入することはできません。
つまり、「事業再構築促進補助金」の対象となる事業と「中小企業省力化投資補助金」の対象となる事業は、明確に分ける必要があります。
|まとめ

中小企業省力化投資補助金は、省力化への投資を支援し、中小企業の付加価値額や生産性向上を目指す制度です。
活用すれば、生産性向上だけでなく、従業員の労働時間の短縮や賃上げも実現できるでしょう。
人材確保や低い生産性に悩んでいる事業主の方は、活用を検討してみてください。
