仕事と家庭の両立・支援従業員を雇用したい・雇用を守りたい
厚生労働省によると、令和4年の婚姻件数は50万4878組で、離婚件数は17万9096組でした。
そして、離婚した場合、子どもの親権を母親が持つケースが9割ほどと言われています。
母子家庭の母親は、勤務できる時間に限りがあったり、体調の悪化や学校行事などの事情で急に休まざるを得なくなったりすることも多いため、一般的には雇用されにくい状況となっています。
彼女達のように雇用されにくい人たちを雇い入れる事業主に対しては、国からのサポート(補助金)があります。
今回は、母子家庭の母親を雇った場合に受け取れる「特定求職者雇用開発助成金」の(特定就職困難者コー)について解説していきます。

目次
1.特定求職者雇用開発助成金とは
2.特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の詳細
3.申請の流れと必要書類
4.申請のポイント
5.まとめ
|特定求職者雇用開発助成金とは

特定求職者雇用開発助成金は、一般に「就職が難しい」とされる高齢者や障害者、母子家庭の母親などの雇用をサポートするために設置された助成金です。
そのため、これらの人達を労働者として雇い入れるだけでなく、継続して雇用することも求められます。
対象労働者によって以下のようなコースがあります。
「特定就職困難者コース」
「生涯現役コース」
「被災者雇用開発コース」
「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」
「就職氷河期世代安定雇用実現コース」
「生活保護受給者等雇用開発コース」
このうち母子家庭の母親などを雇う場合に使えるのが、「特定就職困難者コース」です。
支給期間や支給額は、企業規模や対象者の労働時間などにより異なります。
【 例 】母子家庭の母親等を雇う場合
・支給期間:1年間
・総支給額:40万円(中小企業・短時間労働)、それ以外なら60万円
|「特定就職困難者コース」の詳細

■ 対象となる労働者
対象となるのは、満65歳未満の人のうち、主に次のいずれかに当てはまる人です。
- 満60歳以上の人
- 身体障害者、知的障害者、精神障害者
- 母子家庭の母等※
- 父子家庭の父(児童扶養手当の受給者に限る) など
※20歳未満の子 または、一定の障害がある子を養う母親
※配偶者はいるが、精神や身体の障害により長期にわたって労働能力を失い、扶養する必要があるという場合も当てはまります。
■ 対象となる事業主
対象となるには、事業主として次の要件すべてを満たす必要があります。
- 雇用保険の適用事業主であること
- ハローワーク等の紹介により、対象者を雇用保険の一般被保険者として雇い入れること
- 雇い入れた労働者を継続して2年以上雇用すること
- 雇い入れ前後、6ヶ月間に事業主都合による従業員の解雇をしていないこと
- 対象者の雇い入れより前に同コースでの支給決定がなされた場合、過去3年間の助成対象期間中に事業主都合で当人の解雇・雇い止め等をしていないこと
- 雇い入れ前後6ヶ月間に、倒産や解雇など特定受給資格者となる離職者数が雇い入れ日時点の被保険者数の6%を超えていないこと
- 対象者の出勤および賃金の支払状況等を明らかにする書類を整備・保管し、提出・提示などの協力をすること
※対象期間中に解雇等した場合、以後3年間は助成金の受給ができません。
※支給対象期の途中で離職した場合、その期分の助成金は原則支給されません。
|助成金の受給金額

事業主が対象者に支払った賃金の一部が6ヶ月(支給対象期間内)ごとに支給されます。
金額は、勤務時間や企業規模によって異なりますが、ここでは母子家庭の母親等への支給金額を見てみましょう。
●短時間労働者以外
・中小企業:60万円(30万円×2回)1年間
・中小企業以外:50万円(25万円×2回)1年間
●短時間労働者
・中小企業: 40万円(20万円×2回)1年間
・中小企業以外: 30万円(15万円×2回)1年間
※短時間労働者:所定労働時間が通常の労働者より短く、かつ20時間以上30時間未満である人
助成金は、6ヶ月ごとに2回支給されます。
また、対象期間に支払った賃金の額が上記より低い場合は、その賃金と同額が支給の上限となります。
|申請の流れと必要書類

■ 助成金申請の流れ
●提出場所:労働局またはハローワーク
●申請時期:1期ごと、そして各期の末日の翌日から2ヶ月以内
対象となる労働者の雇い入れから支給申請までの流れを見ていきましょう。
- ハローワーク等からの紹介で対象者を雇い入れる
- 対象者の雇用保険への加入手続きをする
- 労働局による確認後、制度の周知文と支給申請書が交付される
- 雇い入れから6ヶ月を経過した翌日以降に1期目分の支給申請をする
- 労働局により審査・支給決定がされる(通知書が届く)
- 1期目分の助成金が口座に振り込みされる
(2期目分の申請は、1期目終了後から6ヶ月後から2ヶ月以内の間に同様に行います。)
■ 必要な添付書類
- 労働時間や手当ごとの区分がわかる賃金台帳またはその写し
- 支給対象期の出勤状況がわかる出勤簿等またはその写し
- 週の所定労働時間や雇用契約期間がわかる雇用契約書か雇入通知書の写し
- 有料・無料職業紹介事業者等の発行した職業紹介証明書(ハローワーク以外から紹介の場合)
- 雇い入れ日時点で対象労働者であると証明するための書類
(国民年金証書の写し・児童扶養手当の受給や母子家庭の母等であることの証明書など)
※就業規則や総勘定元帳、離職者がいた場合の労働者名簿などが必要となることもあります。
|申請のポイント

この章では、そのなかで特に見逃してしまいがちな、あるいは誤ってしまいがちな申請のポイントについて改めて説明していきます。
■ 雇用の条件に注意
助成金の対象となるのは、「ハローワーク等を経由した場合」の雇用に限られます。
一部の有料・無料職業紹介事業者なども当てはまりますが、知人の紹介、本人からの直接的な応募などは対象外です。
また、初めて雇用契約を結ぶ場合に限られており、過去3年間にアルバイト勤務や委託契約、研修などの参加をしたことがある人は対象外です。
ハローワーク等で紹介される以前に雇用の約束をしていたような場合も対象外となるので注意してください。
■ 法令の遵守が大前提
申請には、事業主が法令を遵守していることが大前提です。
特に、雇用契約の内容が法に触れていないか、有期雇用の場合は自動更新かどうかなども審査の対象となります。
|まとめ

特定求職者雇用開発助成金は、就職が困難だとされる人を労働者として雇用する事業主をサポートする公的な助成金です。
母子家庭の母親を雇う場合には、「特定就職困難者コース」が利用できます。
母子家庭だとフルタイムで働いてもらえない、急に休まれるのは困る、といった理由で雇用を敬遠される事業主の方もいますが、勤務時間に限りがあるからこそ、「業務効率を良くする」「フローを改善する」などの良い機会にもなり得ます。
また、多様な生き方・働き方を認め、有用な人材を雇い入れることは、これからの時代の企業として、大切なことの1つとなってくるでしょう。
この助成金は比較的取り組みやすく、細かな要件や揃える資料は多いですが、丁寧にすすめていけば失敗することも少ないかと思います。
多忙でそんな暇はない!要件を満たしているかわからない!という場合にも、ご相談(無料)ください。
環境整備や申請書類のアドバイスなど、弊社でお手伝いいたします。
